駱山公園(ナクサンコンウォン)

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演劇の街として知られる大学路の近くには、ソウルの鍾路区と城北区の境界ともなっている駱山がある。この駱山の頂上付近に広がる公園が駱山公園である。山と言っても“ソウルのモンマルトルの丘”とも言われるほどの小高い山で、大学路の最寄り駅となる地下鉄4号線の恵化(ヘファ)駅からも徒歩15分程の距離に位置する。
駱山には、歴史を物語る東大門と恵化門までを連結する城郭がある。この城郭は、朝鮮建国直後に都である漢陽を外敵の侵入から守るために、内四山(南山、仁旺山、北岳山、駱山)を連結して築いた城郭の一部である。漢陽は、四神相応の思想によって建てられ、風水地理上では王宮である景福宮を中心に北側の北岳山が“北玄武”、西側の仁旺山が“右白虎”、南側の南山が“南朱雀”、東側の駱山が“左青龍”とされている。この四神が、東西南北の守護神として考えられてきた。
駱山とは、山の形が駱駝(ラクダ)に似ていることからこの名前が付いたと言われている。貴重な自然環境と文化遺産を持つ駱山であったが、日本統治時代を経て現代に至るまでに大部分が破壊・喪失し、特に60年代以降には近代化の都市計画によってアパートや住宅が次々と建てられ、歴史的遺物としての存在を失ってしまった。その後、ソウル市の公園緑地拡充計画の一環として、駱山公園を近隣公園として指定し、駱山の本来の姿と歴史的遺物を復元する事業が推進され、2002年6月に開園された。約46,114坪の広大な敷地には、緑地化のために松を含んだ40種8万9670株の木々が植えられた。現在も都会の中心とは思えないほどの豊かな自然が管理され、市民の憩いの場になっている。城郭に沿って散策道も整備されているため、間近に城郭を見ながら散策を楽しむことができる。

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公園内にも勾配はあるが、頂上付近からは道峰山や仁旺山などの周辺の山々、南山頂上に立つNソウルタワー、ソウル都心の高層ビル群などの素晴らしい景色を望むことができる。夜にはソウルを代表する夜景スポットとしても知られ、恋人たちのデートコースにもなっている。
公園内には散策道が整備されるだけではなく、展望台、テニスコート、運動器具、駱山展示館、売店などのさまざまな施設が整っている。展示館では、駱山公園の現在までの歴史が紹介され、模型や時代別の貴重な写真なども展示されている。また、定期的に行なわれる自然文化体験プログラムなどを通して、駱山の歴史や自然環境などを子供たちに伝えている。

駱山公園の素晴らしい景色は、韓国ドラマや映画などの撮影が行われるロケ地としても有名である。人気ドラマのロケ地を見学するために訪れる観光客も多い。

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タルトンネ(月の街)

公園の周辺は「タルトンネ(月の街)」とも呼ばれている。タルトンネとは、斜面の勾配が激しい小高い山や丘の上に家々が立ち並ぶ地域である。戦後に行き場を失った避難民が住み着いたり、生活環境の厳しい人々が住む場所を求めてこの地に辿りつき、家々が立ち並んだ。月に手が届きそうなほど高い場所にあることから、この名前が付けられた。入り組んだ迷路のような細い路地に家々が立ち並び、昔ながらの風景と生活が息づいている。近代化の波に押し流されながらも、人々の人情や心の豊かさが感じられる。

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施設案内 中央広場入口

大学路に一番近い所に位置している。入口の石垣には風水地理上で駱山を表す“左青龍”が描かれた碑が掲げられている。

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中央広場

駱山公園の大学路側入口付近に中央広場がある。視界の開けた広場の中央にはステージがあり、コンサートやイベントなどが行われている。
広場の周辺には、駱山展示館、売店、公衆トイレなどの施設が整っている。

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駱山展示館

中央広場の一角にある駱山展示館は、朝鮮時代から現在までの駱山の変遷を見ることができる。駱山に関わる歴史的人物とその逸話などの紹介や、各時代のソウルを知ることができる写真などが展示されている。
また、定期的に駱山自然文化体験教室などのプログラムも開催され、駱山の歴史や文化、公園内で見られる木々や草花などの自然環境が紹介されている。

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散策道

公園内には各方面に枝分かれする散策道が整備されている。散策道の途中には、展望台、ベンチ、東屋、運動器具などの施設が整えられ、周辺住民が気軽に訪れることができる運動施設や憩いの場となっている。

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遊び広場

公園の一番高いところには遊び広場がある。東西南北のソウルの都心と遠くの山々の景色まで見渡すことができる。
広場の近くにはバス亭もあり、頂上付近までバスを利用することも可能。

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ソウル城郭

1394年に太祖(李成桂)が漢陽に都を定め、王宮や宗廟の建築をした後、1395年(太祖4年)に“都城築造都監”と呼ばれる機関を設け、都を守るために周囲を取り囲む都城建設に取り掛かる。朝鮮王朝の建国に尽くした幕僚の鄭道伝(朝鮮王朝初期の政治家・学者)に命じて候補地を探させた。1396年(太祖5年)には、春秋2回に分けて建築作業が行なわれた。全国から春秋を合わせて約19万7,400人が動員され、98日間で完成させたといわれる。当時の漢陽の人口がわずか10万人程度であったことを考えると、工事の規模がどれほど大きなものであったかが分かる。
その後、世宗(朝鮮王朝第4代国王)の時には、城郭の全面的な補修整備が行なわれ、それまで土で積み上げられていた部分を石に変え、攻撃、防御施設なども設置された。粛宗(朝鮮王朝第19代国王)、英祖(朝鮮王朝第21代国王)の時にも修復や敵を監視する施設などの設置工事が行なわれた。
内四山の稜線を結んで築いた城郭は、周囲約18km、高さ約12mに及んだ。城郭の途中には、東西南北の4つの大門と、その間に4つの小門、水門2箇所も建設された。
城郭は度重なる崩壊と修復を繰り返してきたが、日本統治時代の都市計画や朝鮮戦争、鉄道の開通などによって城門と城壁の多くが崩壊してしまう。特に山に築かれた城郭を除いて、平地に築かれた城郭は全て取り壊されることとなった。
1970年代から復元事業が進み、現在は約10.5kmの城郭となり、史跡第10号に指定されている。駱山に続く東大門から恵化門の区間は約2.1kmで、城郭に沿って散策道が整備されている。

太祖、世宗、粛宗の時に建設された城郭には、各時代ごとの築造様式の違いがはっきりと確認でき、当時の技術変化の過程を知る貴重な資料ともなっている。

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駱山亭

駱山を復元した際に造られた鮮やかな色彩の六角形の東屋で、ソウルの内四山である南山、仁旺山、北岳山が一目で見渡せる。 大学路の大通りからも、駱山の裾野に特徴的な瓦屋根の駱山亭を見つけることができる。

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弘徳(ホンドク)畑

駱山の麓の東崇洞にあった畑。丙子胡乱の時に、仁祖(朝鮮王朝第16代国王)が三田渡にて降伏した後に、孝宗(仁祖の次男であり当時の鳳林大君、後に朝鮮王朝第17代国王)が、清に人質として捕らえらて瀋陽にいた時、共に付き添って世話をしていた女官の弘徳が、瀋陽にいながらも野菜を育ててキムチを漬け、孝宗に毎日差し出していた。
人質から解放されて母国に戻ってきた後も、この弘徳のキムチの味が忘れられず、孝宗は、駱山の中腹の野菜畑を渡し、キムチを漬けるように言った。この逸話からこの畑の名前が付けられた。

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見所ポイント
  • 庇雨堂(ピウダン) : 庇雨堂は、「雨をかろうじてしのげる家」という意味がある。朝鮮時代に清白吏(各官庁の高官によって選ばれた清廉な官吏)政丞(現代の首相に相当)のユ・グァン(柳寛)の家である。高級官吏という高い地位でありながら、雨が降れば部屋の中でも傘をさしていなければならないほどの素朴な藁葺屋根の家で生活していたという逸話が残されている。朝鮮時代にはよく見られた庶民が生活する家として、慎ましく暮らした先人たちを追慕するために建てられた。
  • 青龍寺 : 朝鮮王朝第6代国王の端宗が、寧越(ヨンウォル)へ追放された時に、王妃が一生留まって端宗の冥福を祈った所。浄業院舊基(市の有形文化財)と英祖が書いた懸板(絵や文字を書いて門戸の上や壁に掲げた板)が残されている。
  • 紫芝洞泉 : 端宗の追放によって降格した王妃が青龍寺に留まりながら、生計を維持するために絹織物に染色をしていた。王妃がこの紫芝洞泉で洗濯をすると、不思議なことに紫色に染まったという悲しい伝説が残っている。
  • 梨花荘 : 1945年独立後の韓国初代大統領であるイ・スンマン(李承晩)が暮らしていた家で、1988年にイ・スンマン博士記念館として開館した。母屋の“コ”の字型をした特徴的な韓国伝統家屋や初代内閣を組織した歴史的な組閣堂がある。市の記念物に指定されている。
駱山公園(ナクサンコンウォン)(韓国語 낙산공원)
住所 (日本語)ソウル市 鐘路区 東崇洞 山2-10
 (韓国語)서울시 종로구 동숭동 산2-10
電話番号 駱山公園管理所 02-743-79859
運営時間 駱山公園:24時間開放 / 駱山展示館:09:00~17:000:00~22:00 
入場料 なし
行き方 可
支払い方法 地下鉄4号線 恵化(ヘファ)駅から徒歩15分